こころ旅 ボツの思い出

NHK BS こころ旅 は2011年 3月から始まったサイクリング旅番組だ。

もう11年続いている。

始まった当時は東北大震災後の混乱真っ只中だった。

こんな時に不謹慎だ、という見方もあったようだ。

わたしが見始めたたのは2015年ごろ。

バリバリだった主役の火野正平さんも今は筋肉も減り、すっかり老人体型。

でも、その分、穏やかになって番組ファンとしてはゆったりと視聴できるような気がする。

しかしよくまあ、毎日毎日番組作るわー

 

1143回目の福岡県柳川の旅はうなぎをめぐる旅、推し着せるような、わざとらしさもなく

さりげない、いい内容だった。

水族館のうなぎの顔が忘れられない。

 

さて、この番組に投稿して、没になった確か?3年前のわたしの投稿を見つけたので

記念に掲載。

 

誰かが読んでくださるだろう。

 

 

幼い頃からもの作りが大好きな私でしたが、30年程前は子育てと仕事に必死でした。

ある日、地元新聞の片隅に「吹きガラス講習-尾花沢市徳良湖(オバナザワシトクラコ)ガラス工房」の記事を見つけ

けして安くはない費用で、5日間の講習を申込み、意気揚々と出かけました。

 

しかし、初日30分で私の予想は見事に覆りました。

先生の作業を見た後、いきなり、さあ、やってみろ。

当然無理。吹き竿の先端で溶解炉から1200度の溶けたガラスを適量取り出すことができるようになるまでまる2日かかりました。

もたもたする度に何度も何度も大声で怒られました。工房の職人さんが見かねて手を出すと、ひとりでさせろ!と先生の大きな声。

 

とんでもないところに来てしまった。

いい歳して怒鳴られまくりました。親にさえこんなに怒られたことはありませんでした。一生分怒られました。

私にできたことは、怒鳴られる度に「ハイ!」「ハイ!」と負けないくらい大声で返事をすることだけでした。

 

昼休みは、40度の室内をでて裏の日陰で休憩。食欲はなく、そのうち汗が乾いて額や髪の毛に塩が吹きます。その塩を手で払いため息をつきました。

酷暑の空の下に徳良湖の水面がありました。

 

朝から夕方まで格闘を続け、何とか5日間で形のあるものにはなりました。

最後の日、先生は一言。続けてみたらどうだ。筋がいい。

口では「ハイ!ありがとうございます!」心の中では「とんでもない。二度と来るかー」

 

それ以降30年、徳良湖には近づくことさえできませんでしたが、昨年、もう時効、とそこに向かいました。微かな記憶を頼りに工房を見つけ、恐る恐る中に入ると、あの作業場や

塩を払った休憩場所もありました。そこから徳良湖の静かな水面も見えました。

 

あの恐ろしい先生の姿を探しました。見つかりません。更に探すと店の壁に先生の穏やかなお顔のパネルがありました。店の方に尋ねると、もう亡くなり工房は別の方が継いでいるとのこと。

 

今は、先生のあの厳しい大声と睨みは、素人を危険に晒すことはできない、5日間で何とかひとりで形あるものを作らせたい、という強い思いからだったと十分すぎるほどわかります。そして先生は世界的にも有名な作家でした。

 

私は、徳良湖を自転車で一周し、穏やかな水面にあの先生の厳しい眼差しを重ねていました。

先生、本当にありがとうございました。

 

 

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ディレクターさんから電話がきて、

「ボツ‼️」と言われ、がっかりして、しばらく立ち直れなかった。🤣