何にもない。
公立の美術館もない。
県内唯一のデパートもつぶれた。
バスは2時間に一本。
市役所に行くのも車がなけりゃ一日がかり。
図書館の本は痛みが目立つ。
仕事帰りにちょっと一杯なんて、家に帰る手段が無い。
マンションばかりが偉そうな中心商店街は人がいない。
と、ナイナイづくしの山形県。
わたしはここで生きてきました。
歳を重ね、冬の雪や寒さがかなりこたえます。
運動不足は特に深刻。
だって出られない。寒くて、雪で。
沖縄や千葉に住む親族がうらやましい。
それでもわたしはここで生きるので
ささやかな幸せに浸る昨今。
山を持つ知人から、春の恵みをいただきました。
言葉にできない、この年に一度の喜び。
愛おしくて、丁寧にていねいに袴をとって
料理しましょう。
コシアブラは、天ぷらと、パスタに。
はしぎは、シンプルに、おひたしで。
どんな味?
表現できません。
強いて言うなら、「一冬を無事に越えた忍耐の味」
明日からも わたしは ここで生きていきます。